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医院承継におけるカルテ引継ぎのポイント、注意点を分かりやすく解説

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病院・クリニックの医院承継(M&A)を実行すると、カルテの引継ぎが行われることになります。
病院・クリニックのカルテは患者の個人情報が記載されているため、その取り扱いについて悩まれる医師も多いのではないでしょうか。

この記事では、医院承継でカルテを引き継ぐ際のポイントや注意点を分かりやすく解説します。

病院・クリニックのカルテは個人情報!

個人情報保護法における個人情報とは、特定の個人を識別することができる情報のことです。
氏名、生年月日、住所や電話番号といったもの以外に、個人の身体データや個人に振り分けられている公的番号なども個人情報にあたります。

生年月日だけのように単体では特定の個人を識別することができない情報であったとしても、氏名、住所と組み合わせると特定の個人を識別することができるものは、個人情報に該当する場合があります。

このような観点から見た場合、病院・クリニックのカルテは、個人情報保護法の対象となる個人情報であると言えるでしょう。

病院・クリニックのカルテ引継ぎは個人情報保護法違反!?

個人情報保護法第27条では、「個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない」と定められています。
つまり、個人情報を取り扱う事業者が、本人の同意を得ずに第三者に情報を提供してしまうと法律違反になるということです。

しかし、病院・クリニックの医院承継に伴うカルテの引継ぎは、個人情報保護法違反とはならないと考えられます。

なぜなら、個人情報保護法第27条5項には下記の通り記載があります。

個人情報保護法第27条で除外されている内容は、以下の通りです。

(個人情報保護法 第27条5項)
5 次に掲げる場合において、当該個人データの提供を受ける者は、前各項の規定の適用については、第三者に該当しないものとする。
一 個人情報取扱事業者が利用目的の達成に必要な範囲内において個人データの取扱いの全部又は一部を委託することに伴って当該個人データが提供される場合
二 合併その他の事由による事業の承継に伴って個人データが提供される場合
三 特定の者との間で共同して利用される個人データが当該特定の者に提供される場合であって、その旨並びに共同して利用される個人データの項目、共同して利用する者の範囲、利用する者の利用目的並びに当該個人データの管理について責任を有する者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名について、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置いているとき。

また、政府広報オンラインでは、本人の同意を得なくても、例外的に個人データを第三者に提供できる場合の例として以下のような内容を掲げています。

(例) 法令に基づく場合(警察、裁判所、税務署等からの照会)、人の生命・身体・財産の保護に必要で本人の同意取得が困難な場合、公衆衛生・児童の健全育成に必要で本人の同意取得が困難な場合、学術研究目的での提供・利用、委託・事業承継・共同利用など
引用元:政府広報オンライン「「個人情報保護法」をわかりやすく解説 個人情報の取扱いルールとは?

医院承継は「合併その他の事由による事業の承継に伴って個人データが提供される場合」に該当するため、病院・クリニックのカルテの引継ぎは、個人情報保護法違反には該当しないと考えられます。

医院承継におけるカルテ引継ぎのポイント

医院承継によってカルテの引継ぎが行われると、カルテそのものはもちろん、管理責任も引き継ぐことになります。法律に基づく適切な管理を行いましょう。

また、患者本人の同意を得ることなくカルテの引継ぎができるのは、本来の目的で使用する場合のみです。
使用目的の範疇を超えて利用する場合は、患者の同意が必要になることがあります。

病院・クリニックのカルテには、患者の氏名、生年月日、住所や電話番号などの情報以外に、個人の身体データなども記載されているため、取り扱いには十分な注意が必要です。

ここでは、医院承継によってカルテの引継ぎを行う際に、押さえておきたいポイントを3つ紹介します。

法定保存期間は5年間

保険医療機関及び保険医療養担当規則により、カルテの保存期間は以下のように定められています。

"(第9条)
保険医療機関は、療養の給付の担当に関する帳簿及び書類その他の記録をその完結の日から三年間保存しなければならない。ただし、患者の診療録にあつては、その完結の日から五年間とする。"
引用元:e-Gov法令検索

法律上、治療が完了した日を起算日として5年間はカルテの保存義務があります。
医院承継によるカルテの引継ぎでは、まず法定保存期間に注意しましょう。

医療事故の消滅時効は20年間

医療事故による被害者の損害賠償請求ができる期間は、2020年4月1日からの医療過誤であれば、「権利を行使できると知った時」から5年、権利を行使できる時から20年で時効となります。

万が一、医療事故による損害賠償請求が行われた場合、カルテが重要な証拠となります。
そのため、消滅時効を迎えるまでの20年間は、カルテを保存しておくことが望ましいとされています。

電子カルテへの移行も検討

病院・クリニックの医院承継では、カルテの引継ぎも行われます。
承継元クリニックの規模によっては、膨大な量のカルテを引継ぐことになるでしょう。

近年、医院承継のタイミングで電子カルテに移行するケースも少なくありません。
電子カルテに移行しても5年間の保存義務、20年間の消滅時効については変わらないものの、増え続ける大量のカルテの保存場所を確保する必要がなくなります。

保管場所があれば紙カルテでも問題はありませんが、カルテ作成の負担を軽減するためにも、電子カルテへの移行を検討してみてはいかがでしょうか。

医院承継におけるカルテ引継ぎの注意点

医院承継におけるカルテ引継ぎの注意点

医院承継における病院・クリニックのカルテ引継ぎは、個人情報保護法違反には該当しないものの、取り扱いには十分な注意が必要です。

患者本人の承諾を得ることなく、本来の目的の範囲を超えて利用した場合は、患者から利用停止を求められることや、最悪の場合は控訴などの問題に発生する可能性もあります。

医院承継後も、患者にこれまでと変わらない医療の提供を継続するには、カルテの引継ぎが不可欠です。
病院・クリニックの承継でカルテを引き継ぐ際は、単なる個人情報データとして引き継ぐのではなく、その先にいる患者の引継ぎであることを忘れないようにしましょう。

病院・クリニックのカルテ引継ぎ、医院承継は名南M&Aにご相談ください

病院・クリニックのカルテ引継ぎ、医院承継は名南M&Aにご相談ください

病院・クリニックのカルテには、患者のプライバシーにかかわる重要な情報が記載されています。
医院承継に伴い、カルテを引き継ぐこと自体は法律違反にはなりませんが、カルテの取り扱いや保管場所、管理方法については、十分注意する必要があります。

近年、医師の高齢化や後継者不足などが背景となり、医院承継のニーズが増加傾向にあります。
病院・クリニックの承継開業を検討する際は、カルテの引継ぎについても理解しておくことが望ましいといえるでしょう。

名南M&Aは、事業承継支援20年にわたる実績で培ったノウハウと税務・労務・法務・不動産・資産形成等有資格者の専門家が一丸となり、開業に向かってワンストップサービスで開業のサポートをいたします。
医院承継・カルテの引継ぎは、名南M&Aにお気軽にご相談ください。

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