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病院経営における後継者問題、早期に検討すべき事業承継について
近年、後継者がいないといった理由から、経営状態が良いにもかかわらず閉院する病院が増加傾向にあります。後継者不足、後継者がいないという病院は年々増加しており、事業承継に関する早めの検討が必要となっています。 そこで今回は、病院経営における後継者問題、早期に検討すべき事業承継について解説します。
個人病院の院長が亡くなった場合、定められている期日までにさまざまな手続きが必要になります。
そこで今回は、個人病院の院長が死亡した後の病院経営や手続きについて解説します。
(なお本記事内の病院には、医療法の定める病院にとどまらず、診療所も含みます。)
目次
個人病院の院長が死亡した場合、まずは「廃止の届出」「後継者による新規開設の届出」などの手続きが必要となります。
個人病院の院長が亡くなり、病院を継ぐ後継者がいない場合や相続人が閉院を決めた場合は、相続人によって病院の廃止の届出を行います。 廃止に関する届出には、以下のようなものがあります。
届出先 | 必要な手続き |
---|---|
保健所 |
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地方厚生局 |
|
社会保険事務所 |
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各都道府県 |
|
税務署 |
|
個人病院の院長の死亡後は、さまざまな届出や手続きをしなければなりません。
また、死亡した日から提出までの期限は届出の種類によって異なるため、顧問税理士や専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
個人病院の院長の死亡後、病院を引き継ぐ後継者がいる場合は、廃止届と同時に後継者の新規開設届を提出します。
これまでと同じ診療スタイルで病院経営を引き継ぐためには、亡くなった院長が申請していた内容をすべて新規で申請しなおす必要があります。
現状の申請内容を確認し、漏れのないように手続きを進めましょう。
医療法人の院長が亡くなったときは、個人病院の院長が亡くなったときとは対応が異なる点があります。
個人病院の場合は、個人として開業に関する認可を受けていますが、医療法人の場合は医業の永続性を趣旨として設立し、法人として認可を受けています。
そのため、後継者が不在の場合でもすぐに医療法人を解散(閉院)することはできないので注意が必要です。
理事長(院長)が死亡により退任した場合、後任となる新理事長を選任する必要があります。
理事長が急逝された場合は、できるだけ早急に後継者を探さなければいけません。
すでに新理事長の候補者がいる場合は、役員変更の手続きが必要です。
亡くなった理事長(医師)の退任届と新理事長の役員変更届を提出します。
理事長の変更は登記しなければならない事項のため、法務局で新理事長の登記も必要です。理事長が管理者の場合、管理者の変更届の提出も行います。
個人病院の場合、経営者である院長の死亡後、後継者がいない場合には、手続きが完了すれば閉院が認められます。
しかし、医療法人の場合は「医業の永続性」を趣旨としていることから、本当に承継する医師がいないことが認められなければ解散することはできません。
そのため、すぐに後継者が見つからない場合は、診療所廃止届、保険医療機関廃止届、保険医死亡届の提出、医籍登録抹消申請などの手続きを行い、まずは診療所自体を閉院する手続きを行います。
その後、どうしても後継者が見つからない場合は、あらためて解散認可申請を行い、解散に向けた手続きを開始することができます。
後継者不在で医療法人の存続ができないと判断した場合は、社員総会決議で解散の決定を行います。
社員総会決議では、議決権の過半数を有する社員が出席し、出席した社員の議決権の過半数をもって議決内容が認められます。
社員総会で解散が認められたあとは、以下のような流れで解散に向けた手続きを行います。
解散認可申請
↓
医療審議会での審議
↓
解散認可
↓
解散の登記(2週間以内に解散の登記、清算人の登記)
↓
清算の手続き(債権の取立及び債務の弁済、残余財産の引渡)
↓
清算の結了(知事(保健所長)への届出、清算結了の登記)
後継者が決まっていない状態で個人病院の院長が死亡してしまうと、以下のようなトラブルが発生しやすくなります。
院長が亡くなったことを理由に閉院する場合には、以下の点に注意が必要です。
従業員の退職金や原状回復に必要な費用など金銭的な問題だけではなく、継続治療が必要な患者への対応は早急に行う必要があります。
個人病院の院長が亡くなった場合、病院を含めた相続財産が相続税の対象になります。
そのため、以下のようなトラブルが起こる可能性があります。
相続財産が高額な場合や法定相続人の人数が少ない場合は、高額の相続税を支払わなければならない可能性があるため、注意が必要です。
また、後継者が決まっていなかった場合は、兄弟間で後継者争いが起こる可能性があります。
個人病院の院長が死亡し、子どもや親族に後継者がいない場合には、血縁関係のない第三者に病院を引き継ぐことも可能です。
しかし、すぐに承継先が決まるわけではないため、継続治療が必要な患者については速やかに転院手続きをしなければなりません。
また、承継先が決まるまでの間、賃料やスタッフの人件費は発生することになります。
さらに、そのうえで承継先が見つからなければ、閉院せざるを得ないこともあります。
個人病院の場合、院長が突然亡くなってしまうとさまざまなトラブルが発生します。
このようなトラブルを回避するためには、生前から後継者問題に向き合い、子どもが複数いる場合は、誰を後継者にするのかを決定したうえで、遺言書を残しておくことが有効です。
また、後継者がいない個人病院の場合は、第三者への承継も検討しておく必要があるでしょう。
ほかにも、家族、スタッフ、患者の混乱を避けるために、緊急時に備えたマニュアルを作成しておくのも有効です。
「院長の意向」「役割分担」「万が一のとき、連絡すべき相手」「現院長が申請している内容やリース契約の内容」などをまとめ、家族やスタッフと情報を共有しておくことでトラブルを最小限に抑えることができます。
近年、後継者がいないといった理由から、経営状態が良いにもかかわらず閉院する病院が増加傾向にあります。後継者不足、後継者がいないという病院は年々増加しており、事業承継に関する早めの検討が必要となっています。 そこで今回は、病院経営における後継者問題、早期に検討すべき事業承継について解説します。