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医院経営の状況・実態とは?開業後、経営難に陥らないための秘訣
医院の経営状態を良好に保つことは、経営者である医師にとってはもちろんですが、その医院で働くスタッフや医院を利用する患者にとっても大切なことです。しかし、実際は赤字経営に陥るケースも多く、統廃合を余儀なくされることも少なくありません。 そこで今回は、近年の医院経営の状況や実態について、今後医院開業を目指す医師に向けて、経営難に陥らないための工夫や対策について解説します。
医師の勤務時間は、これまで長時間労働が常態化され、当たり前のように思われていました。しかし、「働き方改革」「ワークライフバランス」などの言葉が一般的に使われるようになった最近では、仕事だけではなくプライベートも充実させる働き方を意識する医師が増え、長時間労働を防ぐさまざまな取り組みを行う病院も増えています。
そこで今回は、医師の現状の平均勤務時間はどれくらいなのか、医師の働き方改革をテーマに解説をしていきます。
厚生労働省「令和元年 医師の勤務実態調査」によると、一週間あたりの平均勤務時間は男性医師が57時間35分、女性医師が52時間16分です。 年齢別に比較すると、20代、30代、40代の医師の勤務時間が長い傾向にあり、60代以上になると勤務時間は短くなる傾向にあります。
1週間あたりの勤務時間 | 男性医師 | 平成28年との比較 | 女性医師 | 平成28年との比較 |
---|---|---|---|---|
20代 | 61時間34分 | -3時間25分 | 58時間20分 | -52分 |
30代 | 61時間54分 | -1時間57分 | 51時間42分 | -31分 |
40代 | 59時間34分 | -1時間32分 | 49時間15分 | -5分 |
50代 | 56時間16分 | +48分 | 51時間32分 | +1時間27分 |
60代以上 | 47時間20分 | +2時間3分 | 44時間44分 | +44分 |
※厚生労働省「医師の勤務実態について」を元に作成
※医師の宿日直中の待機時間を勤務時間から除外したうえで、診療科別の性、年齢調整、診療科ごとの勤務医療機関調整が行われています
20~50代の勤務時間を男女別に比較すると、男性医師の場合は20~30代が最も長く、年齢が上がるにつれて勤務時間が短くなっています。
しかし、女性医師の勤務時間は20代がもっとも長く、40代がもっとも短くなり、50代になると再び勤務時間が増加しているのが特徴です。これは子育てなどが影響していると考えられています。
また、平成28年の調査と比較すると、男女ともに20~40代では勤務時間が減少していますが、50代以上では勤務時間が増加している点も注目したいポイントです。
週当たり勤務時間 | 病院常勤勤務医 |
---|---|
内科 | 56時間13分 |
外科 | 61時間54分 |
小児科 | 54時間15分 |
産婦人科 | 58時間47分 |
精神科 | 47時間50分 |
皮膚科 | 53時間51分 |
眼科 | 50時間28分 |
耳鼻咽喉科 | 55時間02分 |
泌尿器科 | 56時間59分 |
整形外科 | 58時間50分 |
脳神経外科 | 61時間52分 |
形成外科 | 54時間29分 |
救急科 | 60時間57分 |
麻酔科 | 54時間06分 |
放射線科 | 52時間54分 |
リハビリテ-ション科 | 50時間24分 |
病理診断科 | 52時間49分 |
臨床検査科 | 46時間10分 |
総合診療科 | 57時間15分 |
臨床研修医 | 57時間26分 |
全診療科平均 | 56時間22分 |
(出典:厚生労働省「医師の勤務実態について」)
診療科別の勤務時間を見ると、診療科全体の平均勤務時間は56時間22分ですが、外科、脳神経外科、救急科は平均勤務時間よりも勤務時間が長く、精神科、リハビリテーション科、眼科は比較的勤務時間が短くなっています。
医師の勤務時間は、年齢や所属する診療科目によっても異なりますが、「緊急対応」や「手術や外来対応等の延長」などの理由から、長時間労働の指摘がある業種の一つです。
令和6年度から医師の働き方改革として、医師の時間外労働上限規制が適用されます。
これにより、医師の勤務時間は休日労働を含め、年960時間、月100時間までに制限しなければいけません。(A水準)
地域医療の医療提供体制の確保のために暫定的に例外が認められるケース(B水準・連携B水準)、集中的に技能を向上させるために例外が認めらえるケース(C-1水準・C-2水準)の場合は、年1,860時間、月100時間までを上限とすることができますが、令和5年度末までに都道府県から特例水準指定を受ける必要があります。
またA水準以外は、特例水準指定を受けた医療機関に所属するすべての医師が対象ではなく、指定された業務に従事する医師にのみ適用されるため、診療科や業務ごとに例外水準の指定申請を行わなければいけません。
そのため、令和6年から開始される医師の働き方改革に対応するため、各医療機関では以下のような対策が進められています。
医師の勤務時間の上限規定を遵守する方法の一つとして、変形労働制の導入があげられます。
毎月1か月単位で勤務予定表を作成し、1週間の勤務時間が法定労働時間を超えないように調整していきます。
1ヶ月単位の変形労働時間制を採用すれば、特定の日の勤務時間が8時間を超えたとしても、1週間当たりの勤務時間が上限内におさまっていれば問題はありません。
医療機関に変形労働制を導入することで、夜間業務や休日業務なども勤務時間の上限内で取り組めるようになるでしょう。
医師としてのスキルアップを図るためには、自己研鑽の時間を確保することが大切です。
厚生労働省では、使用者の指揮命令下に置かれていない自己研鑽については労働時間に該当しないとしています。
そのため、使用者の指揮命令下に置かれる業務内容(診療に関するもの、会議打ち合わせ等、上長の命令に基づく、学会発表や研究の準備)と、指揮命令下に置かれない業務内容(休憩、休息、自己研鑽、上長の命令に基づかない学会発表や研究の準備)を明確化することで、時間外労働の時間が大幅に減少したという成功例があります。
医師の勤務時間を把握するためには、勤怠システムの導入も不可欠です。
ICカードを利用した勤怠管理システムを導入したことで、勤務時間の厳格化を行った結果、職員の労務時間の意識が向上し、早すぎる出勤の抑制に効果が上がったという結果が出ています。
医師事務作業補助者の活用や特定行為研修修了者を活用することで、医師の事務作業を減らすなど、負担軽減に成功した事例もあります。
医師以外が行うことが可能な事務作業を補助者が行うことで、時間外労働時間が減少した事例や、認定看護師・特定行為研修を修了した特定行為に係る看護師を配置することで、医師との連携がスムーズになり、業務効率化につながった事例もあります。
医師の勤務時間を減らすには、当直体制の見直しや複数主治医制、チーム制の導入も有効です。
複数主治医制を導入することで、複数の主治医で患者の情報を共有し、スムーズな対応ができるようになるため、夜間の呼び出しが減少するなど、勤務時間の短縮につながります。
近年、医師の高齢化や後継者不足が問題となっています。
特に地方では、医師の高齢化や後継者がいないなどの理由から閉院してしまう診療所は少なくありません。
病診連携とは、近隣の病院と診療所が患者を紹介し合う仕組みのことです。
病院と診療所の役割を決め、お互いの業務を分担しあうなどの連携を図ることで、病院、診療所のそれぞれの医師の負担の軽減につながります。
外来や手術等で医師が病棟に滞在する時間が少ないと、医師からの指示を把握するまでに時間がかかる場合があります。
そこで病棟に包括診療医を配置し、病棟マネジメントを実施することで、医師・夜勤薬剤師・夜勤看護師の業務負担が軽減され、働き方改革に成功した事例もあります。
医師の勤務時間の短縮には、ICTの活用も有効です。
例えば、病院内のコミュニケーションにチャット機能を有するアプリケーションを導入することで、通話を必要最低限に抑えることができます。
通話による業務中断を最小限に減らすことができれば、業務に集中しやすい環境作りにつながるでしょう。
勤務医の場合、使用者の指揮下のもと業務を行っているため、個人の努力だけで勤務時間を短縮することは難しいと言えます。
しかし、開業医になると診療方針や勤務時間は、医師自身の裁量で決めることができます。
ただし、開業医になった場合、部下となる医師や雇用するスタッフの勤務時間には注意する必要があるでしょう。
医師の勤務時間は、医師の年齢や所属する診療科目によって異なります。
これまで長時間労働の指摘がある業種の一つであった医療業界にも働き方改革のメスが入り、今後は勤務時間の上限内でより良い治療を行うことが求められていくでしょう。
使用者の指揮下で業務を行う勤務医の場合、個人の努力だけで勤務時間を短縮することは難しいかもしれません。
しかし、開業医になれば診療方針や勤務時間は開業した医師の裁量で決められるため、仕事とプライベート両方を充実させた働き方をすることが可能です。
勤務時間や働き方を変えたい場合は、開業医をめざすのも一つの方法だと言えるでしょう。
医院の経営状態を良好に保つことは、経営者である医師にとってはもちろんですが、その医院で働くスタッフや医院を利用する患者にとっても大切なことです。しかし、実際は赤字経営に陥るケースも多く、統廃合を余儀なくされることも少なくありません。 そこで今回は、近年の医院経営の状況や実態について、今後医院開業を目指す医師に向けて、経営難に陥らないための工夫や対策について解説します。