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医院(クリニック)承継問題の現状や方法について
近年、医院(クリニック)に従事する医師の年齢が高齢化し、自ら引退のタイミングを設定できる開業医は、より早い段階で医院の承継問題について検討する必要があると言われています。 そこで今回は、医院の承継問題の現状や承継の方法について紹介します。
現在、医療業界では、後継者問題、医師不足、医師の高齢化、建物の老朽化などさまざまな問題を抱えているところが増えています。これらの問題を解決できる方法のひとつにM&Aがあります。
そこで今回は、実際に行われた医療法人のM&A事例を紹介します。
医療法人とは、医療法の規定に基づいて設立された、病院、診療所(クリニック、医院)、介護老人保健施設などの法人のことをいいます。
医療法人には「社団たる医療法人」と「財団たる医療法人」があります。社団は、人の集まりを基盤とした法人のことで、財団とは提供された財産を運営するために作られた法人です。
近年、日本では高齢化が進んでおり、総人口に対して高齢者の占める割合は年々増加しています。高齢化に伴い、病院や医療法人の数は増加傾向にありますが、その一方では医師の高齢化、医師不足、施設の老朽化、経営難といった問題を抱える医療法人の数も増えてきています。しかし、病院やクリニックは地域の医療を支えていることが多く、廃業したくても簡単にはできないというのが医療法人の現状なのです。
経営の悪化、施設の老朽化、理事の高齢化などで、病院経営を継続することが難しくなっている医療法人が、経営の立て直しと地域医療確保の両方の問題を解決する方法として、M&Aを行うケースが増えてきています。ここからは、実際に行われた医療法人のM&Aの事例をいくつか紹介します。
JA埼玉厚生連では、「埼玉県厚生農業協同組合連合会 熊谷総合病院」と「久喜総合病院」を運営していましたが、経営難に陥り、2016年、熊谷総合病院は社会医療法人北斗(帯広市)の支援によって新設された「医療法人熊谷総合病院」に譲渡されました。
JA埼玉厚生連は約65億円の負債を抱えており、2016年7月22日に東京地裁から破産手続きの開始決定を受けました。新設された医療法人熊谷総合病院は、現在では次々に新病棟が新設されているだけではなく、新しい設備も数多く導入されるようになり、熊谷市民の地域医療を担う総合病院として大きな役割を果たしています。
2016年、NTT東日本が「NTT東日本東北病院」を東北薬科大学に譲渡し、「東北医科薬科大学 若林病院」が新設されました。
NTT東日本では、東北地方における医師不足(医療過疎)解消等、地域が抱える諸課題の解消に向けた取り組みに貢献すること、救急医療・地域包括医療の充実を図ることを目的に、平成 28年 4 月に医学部を新設する学校法人東北薬科大学との間で事業譲渡に向けた協議を重ねてきました。
譲渡側のNTT東日本は、東北地域が抱えていた医療に関する問題を解決するための貢献ができ、新設された東北医科薬科 若林病院では、大学病院としての役割である「地域医療への貢献」「研究」「医学教育における総合診療医の育成」を遂行するために現在もさまざまな取り組みが行われています。
日本郵政株式会社では赤字部門となっている病院事業の合理化を図っていましたが、2017年、地域の救急医療の充実を目指す済生会と合意したことで、横浜逓信病院が譲渡されました。
病院を譲り受けた済生会は平成30年2月1日に「済生会東神奈川リハビリテーション病院」として開院しました。済生会は、済生会東神奈川リハビリテーション病院以外に「横浜市東部病院」と「神奈川県病院」を運営しており、横浜市東部病院では主に高度急性期医療を、神奈川県病院では地域包括ケア・緩和ケア病棟を含む急性期医療を、済生会東神奈川リハビリテーション病院では回復期リハビリテーションを中心に、それぞれの病院で機能の違いを活かした分担を行うことで、より高度な医療を地域に提供できるようになりました。
2017年、経営再建中であった株式会社東芝は、東芝本体の経営不振による債務超過を解消する目的で、グループ社員の福利厚生の一環として運営していた「東芝病院」を、医療法人社団緑野会(神奈川県大和市)に事業譲渡しました。
東芝グループの社員のための医療施設であった東芝病院は、2018年4月、「東京品川病院」と名称が変わり、地域医療を担う病院として新しく生まれ変わりました。東京品川病院では、救急医療が強化され、24時間365日、土日や夜間でも緊急手術に対応できる設備が整っています。
2018年、医療法人沖縄徳洲会が経営する「中部徳洲会病院」と医療法人湯池会が経営する「北谷病院」の吸収合併が行われました。
中部徳洲会病院と北谷病院は従前より中部圏域の良質な地域医療発展のために連携をしてきましたが、北谷病院側にはスタッフの高齢化や後継者不在という問題があり、中部徳洲会病院側には、度重なる移転の結果両院の距離が近くなってしまったという問題を抱えていました。
そこで地域医療の維持発展および雇用維持を目的として協議が行われてきた結果、吸収合併することで合意に至り、医療法人沖縄徳洲会が北谷病院を取得しました。現在、医療法人湯池会が経営していた北谷病院は「医療法人徳洲会 北谷病院」として存続しています。
医療法人沖縄徳洲会は吸収合併によって北谷病院を取得することができ、北谷病院は合併によって人材が確保できるようになりました。
2019年、「大阪警察病院」を運営する医療法人警和会が、NTT西日本が運営する「NTT西日本大阪病院」を買収し、両病院の統合・合併を行いました。
西日本大阪病院も大阪警察病院も、ともに比較的規模の大きい病院です。合併のきっかけとなったのは、大阪警察病院の建物が築30年を超えていること、医療機器の導入などで手狭になるが予想されることから、建て替えが検討されていたことです。しかし、大阪警察病院の敷地がやや狭かったことから、建て替えだけではなく、他の病院を買収・合併も視野に入れることになり、買収先の候補になったのが大阪警察病院のすぐ近くにあったNTT西日本大阪病院です。
NTT西日本大阪病院の敷地は大阪警察病院の2倍近くあり、将来の建て替えにも対応できること、警和会・大阪警察病院とNTT西日本大阪病院の職員が一丸となり、地域の患者の診察や医療機関との連携を行えるなどの条件が重なったことから買収の話が進められました。
現在、NTT西日本大阪病院は「第二大阪警察病院」と名称が変わり、スタッフも全員雇用されて病院経営が継続されています。
医療業界のM&Aは、一般企業とは異なり、民間企業の参入が原則として認められていません。そのため、経営不振や後継者不足による医療法人やクリニックの事業承継は、医療業界のなかで行われていくことになります。とはいえ、これから数年で大手医療法人が急速に台頭する可能性は低いため、今後医療業界における医療法人M&Aは若手医師への承継が中心になっていくことが予想されています。
新型コロナウイルス感染症による影響で経営が悪化している医療法人やクリニックも少なくないため、今後も医療業界のM&Aは増加していく可能性が高いと考えられます。
医療法人のM&Aと聞くと病院を乗っ取られるというイメージがある方も多いかもしれません。しかし、実際に行われたM&Aの事例からも分かるように、両者が抱える問題を補い合える相手が見つかれば、お互いの問題を解決できるだけでなく、地域医療やスタッフの雇用も守ることができます。
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近年、医院(クリニック)に従事する医師の年齢が高齢化し、自ら引退のタイミングを設定できる開業医は、より早い段階で医院の承継問題について検討する必要があると言われています。 そこで今回は、医院の承継問題の現状や承継の方法について紹介します。