- 「医療法人の承継」と「個人事業の承継」の違いは?
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[医療法人を承継する場合]
医療法人の種類によりますが、最も法人数の多い「出資持分あり」の医療法人の場合、譲渡スキームは出資持分譲渡及び社員総会及び理事会の構成員入れ替えにより、経営権を移転します。
不動産賃貸借契約やリース契約、雇用契約等の各種契約当事者は医療法人であるため、権利義務はそのまま引き継がれます。[個人事業を承継する場合]
譲渡スキームは事業譲渡により経営権を移転します。
保健所や厚生局、税務署等の行政手続きは廃止、新規開設の扱いとなります。
不動産賃貸借契約、リース契約の引継ぎは原則行わず、譲り受けるドクターが新たに契約を締結します。スタッフの雇用契約も引継がず、継続勤務を希望するスタッフがいる場合は新たに雇用契約を取り交わすことを検討します。 - 「持分あり」と「持分なし」の医療法人の違いは?
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社団医療法人は「出資持分のある医療法人(以下、持分あり医療法人)」と「出資持分のない医療法人(以下、持分なし医療法人)」に大別されます。
この「持分あり医療法人」と「持分なし医療法人」の違いは、医療法人オーナーが医療法人の財産権を持っているか、持っていないか、です。具体的には、医療法人の剰余金がオーナーに帰属するか否か、ということです。医療法人における財産権の有無を判断するには、- 出資持分払戻請求権
- 残余財産分配請求権
<出資持分払戻請求権>
出資者が社員を退社することを要件に、医療法人に対して出資額に応じた持分の払戻しを請求する権利<残余財産分配請求権>
法人解散の際、出資者が医療法人の残余財産を出資額に応じて分配を受ける権利上記のどちらかの権利を有する場合、持分あり医療法人となりますが、両権利ともに「出資額に応じた」とあり、出資金額だけでなく、出資者における出資割合によって按分した医療法人の剰余金についても効力が及ぶ点が財産権を有すると言われる由縁です。
- 医療法人の「社員」とは?
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医療法人における「社員」とは、医療法人の最高意思決定機関である社員総会における議決権を有する者をいい、原則3名以上の社員が必要とされます。ここでいう「社員」は、いわゆる従業員ではありません。医療法人の「社員」は、株式会社における「株主」と同様に、医療法人の役員(理事及び監事)を選任する権利などが与えられており、実質的に医療法人を支配していると言えます。
※医療法人と株式会社ではいくつか違いがあります。
- 最高意思決定権の違い
内容 株式会社 経過措置医療法人
(持分あり医療法人)基金拠出型医療法人
(持分なし医療法人)金銭等の払込者 株主 出資者 拠出者 最高意思決定機関で
議決権を持つ者株主 社員 社員 議決権数 株数に応じて 1人1票 1人1票 - 医療法人においては、社員となり最高意思決定機関での議決権を得るために、出資金や基金を保有する必要はありません(ただし、経過措置医療法人で、定款に「社員となるためには一口以上の出資を持つ必要がある」と記載がある場合にはその限りではない)。
- 株式会社の最高意思決定機関(株主総会)における株主の議決権数は原則、保有する株数に応じて変動しますが、医療法人の最高意思決定機関(社員総会)における議決権数は、例外なく1人1票です。
<社員就任(入社)方法>
社員は、「社員総会にて社員として選任」されることでその資格が得られます。実務的には、出資金や基金を相続しただけでは社員就任とならない点に注意が必要となります。<社員の要件>
医療法に具体的記載はありませんが、「医療法人運営管理指導要綱」や平成28年3月25日の厚労省医政局通知「医政発0325第3号」に記載されています。要件を簡単に記載すると以下の通りです。- 自然人または法人(ただし、営利法人を除く)
- 義務教育を終了していること
※医療法人の理事は高校卒業程度とされているため、理事要件と異なる点に注意が必要です。
- 最高意思決定権の違い
- 医療法人の「理事」とは?
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医療法人において、株式会社の取締役に対応する者を、「理事」といいます。
理事は、社員総会で選任され、理事会にて医療法人運営の意思決定の事実上の職務執行権限を有することになります。人数は原則3名以上必要です。(例外的に2名でも認められる場合あり(医療法第46条3①))理事の資格要件などはありませんが、- 自然人(※)であること
- 高校卒業程度の年齢であること
また、株式会社とは異なり、理事は代表権を有せず、氏名、住所などを登記する必要はありません。※自然人:司法上の概念で、権利義務の主体となる個人のこと。法人に対する用語。
- 医療法人の「理事長」の要件は?
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医療法人において、株式会社の代表取締役に対応する者を「理事長」といいます。理事長は、理事会にて1名選定され、医療法人の代表権を有することになります。
理事長についての要件としては- 原則、医師または歯科医師であること
- 理事であること
理事長は登記事項となっていますので、選定された際には登記が必要です。
- 医療法人の「監事」とは?
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医療法人において、株式会社の監査役に対応する者を「監事」といいます。医療法人の職務や会計の監査を行います。
監事の要件としては、都道府県等の行政により指導が異なるため明確ではありませんが、- 医療法人の理事長と近親者でないこと
- 医療法人の会計を監査する能力を有していること
- 医療法人の理事・職員でないこと
(詳細な要件は管轄行政の指導により多少異なるため、事前に確認することをお勧めします。) - 承継開業を希望する場合、準備はいつから始めたらいい?
- 取引の成約は、譲渡側が譲渡したいタイミングと譲受側が譲り受けたいタイミングが一致することが必須です。
承継開業の可能性があるのであれば、早い段階から情報収集を進めることをお勧めします。 - 医院の引き継ぎ期間は?
- 医院承継における引継ぎ期間は診療科目やドクター同士のお話合いによって異なりますが、最終譲渡契約締結後、2か月~半年程度は引継ぎを行うことでスムーズな経営移行ができると考えます。
- デューディリジェンスとは?
- デューディリジェンス(買収監査) とは、買い手が医院承継を最終判断するにあたり、税理士や弁護士等が経営の実態を把握するために行なう医院(医療法人)の調査活動です。通常、売り手と買い手が最終合意に向けてお互いに協力し合うことを約束する基本合意締結後に行われます。
具体的な作業は、これまで検討の前提となっていた資料(財務諸表や契約書など)の正確性、資産の実在性などの確認です。詳しく調べようとすればキリがありませんので、限られた予算内で買い手が必要と思う範囲で、しかるべき専門家への依頼をお勧めします。 - 必要資金は?
- 譲渡側に支払う対価は、既存の運営実績や取引の資産によって譲渡側と譲受側双方の合意により決定します。
- 資金調達の方法は?
- 事業計画書の策定から金融機関との折衝についても、弊社が一貫してご支援します。
- 患者や従業員への開示はいつごろが望ましい?
- 最終譲渡契約締結後から従業員及び患者への告知を随時行っていきます。